2010年5月14日金曜日

売れる理由とズレ

 売れるようにするには「こんなやり方」を間違えないことが肝心です。最終局面は、お客さまの目の前でなにを言うかで決まります。そこで考えておきたいことが大事なことあります。

売れるには理由があり、売れないには理由があります。売る側、買う側の接点に立って言えば、

1)感情を動かす
2)感情的なつながりを持つ
3)お客さまの前でナニを言うかで決まる

この3つが正しく揃うと売れます。ここでの、感情とは「欲しい」と思うことです。
だ から、人間関係を難しくすることは両者にとって何のメリットもありません。

売れない状態とは3つのことがズレていることに他なりません。ズレることで人間関係に支障が出る場合が多いのです。売る現場において最悪にして、もっとも多いパターンは、お客さまを説得してしまうことです。
説得を営業と思い込んでいて感情を違う方向へ動かしてしまうことです。相手のためを思って熱心に説得する場合も同様のことがおこります。

どうしてそんなことになるかと言う と、売る側の感情と、買う側の感情が違うまま、商売をするからです。

■ズレるには理由がある。

お客さま第一、お客さまのために店はある・・・・お客さまを最優先することを訴えた言葉・・・つまりお客さまに喜んでもらうことを目的とした企業活動のことです。・・・それを詭弁だと考える人は少なくありません。

なぜなら企業は儲けることを目標にして活動をしていると考えているからです。だから、きれいごとだと思います。嘘だと感じる。そんなことで会社は存続できないと考えます。利益も出さすに存続できないというのはその通りです。だから徹底した利益追求が必要です。ところがここに売る側とお客さまの間にズレが生じる原因があります。皮肉にも熱心になるほどズレてしまうこともあります。

 商売の目的は儲けることにあります。だからどれだけ売るかが目標になります。あるいはどれだけ利益をあげるかが目標になります。
売る側の論理に立てばそういうことです。ところがいくら売れ、売りたいといっても相手がある。相手には相手の論理があります。相手の論理の中心にあるのはなにか、メリットを得ることです。必要か、欲しいか、です。人間が もっとも必要とするものは食べ物です。食べると満腹になります。安心できます。「メリットがある」ことが買い物の常識として定着しています。

かくして両者の思惑は噛み合わなくなり「敵対」することになります。
片方はどのようにして儲けるかと考え、片方はだまされないようにしょうと考えます。
この状態が露骨になるほど商売はうまくいかない。

詐欺師は、この状態を認識しているので、いかに味方と思わせるかを研究して 成果をあげます。ところが正直に、真面目に商売していると、そこに知恵が回らなくなります。努力している分、やましい気持ちがない分、自分たちの論理を振り回してしまうので困ったことに中途半端に敵対してしまうのです。つまりズレが生じます。


■「なぜ、キャンペーン 中」がダメなのか

このズレを修正するために、因果関係を読み取り、全体を再構築した状態が、お客さまを最優先する心を目的にした運営で す。つまり企業活動の「羅針盤」になる考えです。
この羅針盤のもとで、はっきりしていることは「人間関係を難しくするな」と言うことで す。地域に根を張って商売する上で、人間関係を難しくする必要があるのか。

人間関係を難しくしておいて、売ろうというのは自分の首をしめながら、がんばれというようなものなのです。人間関係を難しくして一体何のメリットがあるのか、自らに問いかけてみてみましょう。

ところが実際には、羅針盤が違っていると、お客さまを目の前にして、タイミングのズレから、人間関係を難しくすることを言ってしまうのです。その代表例のひとつが「い まならキャンペーン中でお得です。」

この言葉をよく使います。使用禁止にしている会社もありますが、頻繁に使う会社もあります。禁止にする必要はありません、頻繁に使ってもいい。しかしタイミングを考えずに、考えもなしに頻繁に使うのは、愚の骨頂です。商品説明も同じです。

いったいどこでこういう言葉ややり方を学んだのでしょう。成功事例があったかもしれない。考えた結果かもしれない、だれかの真似かも知れない。
しかし、物事には順序があります。営業活動とはコミュニケーション・スキルの集大成のようなものです。道理を無視して成り立たないのです。


■2 通りのタイプがある

大きく分けて、ビジネスには2通りのタイプがあります。「売り手の論理」に立って、売り手にお客さまを合わさせようとするタイプと、お客さまに合わせる「お客さま大事」のタイプです。

ある勉強会のことです。東京で成功した事例があり、それに使用したチラ シの意見交換が行われました。すると関西の業者たちから反論が起こった。「これは嘘だ、こんなことができるわけがない」と計算してその根拠を説明してみせました。

売り手の論理で説明したのです。その主張は、なるほどそうだと思えることばかりです。だが問題はお客さまの論理とズレていることです。つまりどちらも、関東も関西も 間違っていないのです。しかし、売るとは理屈ではなく、欲しいと思う人を作ることです。チラシの内容に「立場の違いで判断が変わること」がある事実を観て いないのです。言い換えると「職人気質」の限界が露呈した形になりました。

自分たちの都合を優先するために、「売れるには理由がある」と いう現実を見ていないのです。売れるとは欲しいと思う人が多いということです。売るとは結果であり、営業活動とは必要と欲求のバランスを整えるプロセスであり、必要でもないし、欲しくもないものを、必要だし、欲しいにステップアップしていく作業です。

・必要でもないし、欲しくもない
・必要だが、欲しくない
・必要ではないが、欲しい
・必要だし、欲しい

だからお客さま最優先を羅針盤にしないと、自らが安易な選択をして間違ったことをしてしまう。繰り返し購入していただく機会を失う。誰だって必要でもないし、欲しくもないものを押し付けられたら感謝しません。

メーカーなら自分で必要とされるもの、欲しいものを作れるし、小売業なら仕入れの選択ができる。しかしその本質は、商品やサービスにあるのではなく、自分たちが意味を与えられるかです。

日本の技術力は高いという、しかし世界を席巻できる商品が生まれないのはなぜか。
WALK MANは、なぜIPodに発展できなかったのか、両者は似ているが全く違う発想のものです。なぜ高い技術力が生かせないのか、残念なことに意味の与え方で遅れをとっているのです。ズレが遅れになっているのです。


■欲しいとはどういうことか

商品の絶対的な価値よりも、お客さまの考える価値が上回っていると欲しいと思います。下回っていると欲しくなりません。価値は、モノやサービスにはありません。価値は、モノやサービスから得られる「こと」にあります。ほとんど感情と密接につながっています。どう使えるのか、どんな幸福があるのか、それが問題なのです。

身だしなみがなぜ大事なのか、それはお 客さまが感じる価値の問題だからです。だから身だしなみ、接客、サービス、ホスピタリティ、信頼は価値の一部として効果を発揮する。感情を動かすベースで す。しかしすべてではありません。

だから一方で「安ければ無人セルフでもいい。」というのも感じ方もあります。競争相手も出てきます。価値の感じ方はそれらに左右されることは明白です。儲けるを軸にして、どのように必要と欲求のバランスをとるのか、いつも問われている課題です。

値札と 一致しないお客さまが感じる価値があります。下回ると売れない。理屈ではない価値があります。100円で売られていた古書が20000円で売れます。価値は買う人が決めます。価値、価値って難しそうに聞こえるかも知れませんが、価値の正体とは「得した!」「いいわ!」「気持ちいい!」「楽になる!」「うれしい!」「楽しい!」「ベンリーッ!」ほとんど感情なのです。

言っていること、していることが、「必要と欲求」のバランスとう まく噛み合ないと売れなくなります。逆にピシャッとあわせると売れます。


■価格はズレを調整するが、調整方法は価格だけではない


ピ シャッとあわせるために、必要と欲求のバランスを考えてみましょう。競争相手のことを横に置いて考えると、価格との関係が分かります。

・【必要だし、欲しい】状態にあると、高くても売れます。

・【必要ではないが、欲しい】状態では高くできます。

・【必要だが欲しくない】の状態にある商品は、安くすると売れますので、価格競争の対象になりやすいものです。
全部がそうではありませんが、スーパーマーケットで扱っている商品はこの範囲のものが多いのです。安くすると売れるものは商品の性格によりますが、価値を上回る付加価値をつけると高くても売れます。

・【必要でもないし、欲しくもない】状態の商品は、それ単体で売ることは難しくなります。工夫が必要です。一番いいのは使う意味を工夫することです。付加価値です。逆におまけという付加価値のつけかたもあります。

売れるか、売れないかは、 「欲しい」で決まります。「欲しい」にできる力が営業力であり、つまり高くても売れる力です。「欲しい」「この人から買いたい」に持って行くのが 「営業活動」です。

 ところが人間関係が難しいと「欲しい」「この人から買いたい」に持って行くことが難しくなります。売る側の論理、買う 側の論理にズレがあるから持って行けなくなるのです。しかもズレると敵対的なります。敵対的になるほど売る側の論理が強くなりますます。人間関係は難しくなります。難しくなるといっても個人が個人と敵対しているのと違います。表面は同じように接客し行動します。でも信頼関係がおかしくなり売れないのです。

売る側の論理とは、商品/原価/利益/目標/期限/経費/仕入/絶対的価値/競争相手/立地などなどです。売る側の論理を問題にすることは間違ったことでも、悪いことではありません。でもお客さまの論理と乖離していることが多いのです。

お客さまの論理が、欲しいか、欲しくないか、感情だけなのに対して、イチイチ理屈っぽくなります。しかしお客さまの論理は、注意→関心→欲求の三段階だけです。

それなのに、お客さまの感情に関係なく売る側の 論理で仕掛けて行くとお客さまは見向きもしません。関心もないのに、「キャンペーン中ですから、お得です。」と言われると防御態勢に入ります。商品知識を説明 されると逃げ出したくなります。

お客さまの論理を念頭に置いて注意→関心→欲求の三段階をステップアップしていき、関心を持ったときに、 商品知識を説明されると聞きます。決断するときに「キャンペーン中ですからお得です」と言われると、ありがたいと思います。同じことでもタイミングが違う と害虫になるし、天使にもなります。


■説得しないアプローチ

「感情を動かす」とは注意→関心→欲求の三段階をス テップアップすることです。

感情はメカニカルなものなので、スイッチの押し方次第なのです。しかし売り手の論理で行動していると、間違ったスイッ チを押して人間関係を難しくしてしまうのです。しかも説得しようとします。ますます関係は悪くなります。

 説得しなくていい方法が売れる 方法なのです。話すのではなく聴くのです。それが基本です。聴くこともなく、自分の論理、つまり今日中にこれだけ売りたいという立場で話したい事を話して いるだけでは売れないのです。

この「今日中にこれだけ売りたい」があって会社は儲かるのだが信念化していると、「お客さま大事」の理念は きれいごとだと勘違いしてしまうのです。つまりきれいごとだとしている限り、メカニカルである感情を動かすスイッチを押し間違うので修正できないのです。

ま すます説得が過激になるか、自信を失うかです。燃え尽き症候群になることもあります。
「今日中にこれだけ売りたい」意欲は行動の源泉です。不可欠ですが、使い方を間違えては台無しになります。

「注意→関心→欲求」の三段階を順番にステップアップしていき、欲求が起こった 段階で、アプローチなのです。欲求が起こった状態・・・これが見込客なのです。

見込客に対して、しっかり感情を受け止める、つまりしっかり聴くことで感情的なつながりが持てるようになります。そこでお客さまを前にしてナニを言うか、売れるか売れないかは、それで決まります。

(1) 感情を動かす(注意→関心→欲求)
(2)感情的なつながりを持つ
(3)お客様の前で、なにを言うかで決まる

つまり、裏返 すと、3つがズレると売れない理由になります。
3つがズレないように逆算します。

(1)欲求を引き出すにはどうしたらいいか、
(2) 関心を持ってもらうにはどうしたらいいか、
(3)注意をひくにはどうしたらいいのか。
(4)欲求を引き出すことに到達したら、ナニを言うか。

説得が必要になってしまうのは、欲しくなっていないのになんとかしょうとするからです。食欲のない人にムリに食べろというのと同じようなものです。繰り返しご利用頂く為に人間関係を難しくしないことはいまも将来も大切です。
説得しないアプローチを鉄則にするのです。

■ 売れる会話のネタの作り方

アプローチに発展する会話のネタの作り方があります。ここでは人間関係をよくすることを念頭に説明します。大規模マーケティングも小売りも同じです。「質問→集計→提案」です。聴くことです。聴いたことを集めて整理すると情報が作れます。情報は提案に使 えます。

たとえばこんな感じもそのひとつです。
「クルマの汚れで困っている方が多くて、こういう(具体的に)ご質問をよくいただきます。お困りでないですか」
「○○○だな」・・・内容で見込客かどうかが分かります。
「そうでしょう。だからこういうことをさせていただいている んですよ」

この段階で「注意を引く」段階に到達しますので、関心を引く段階に進みます。

見込客でない場合には、
「クルマの汚れで困っている方が多くて、こういう(具体的に)ご質問をよくいただきます。お困りでないですか」「○○○だな」・・・見込客かどうかが分かります。
「お困りのことがあればなんでも、いつでもご相談ください。」

どれだけ言葉を使うか、会話をするかは商品の性格によって違いますので、商品と売り方によって、もっと短くできます。いずれにしても決めるのは経験がある、あるいは仮説が使える人です。

冒頭、「人間関係をよくすることを念頭に・・」と言った様に、「お困りのこと があればなんでも、いつでもご相談ください。」と質問をして集計するネタを集めることが、関係作りになっているのです。

情報がない場合 は、仮説を組み立てて、感情を動かすストーリーを作ります。しかし、関係性をよくしておくこと、見込客を作っておくことが、やりやすくなる条件、売れる条件です。人間関係が難しい状態で売るというのは誰がやっても至難の技なのです。売れる理由は、少し掘り下げて考える習慣を身につけると簡単です。