2011年10月28日金曜日

決定的な違いは<BE(存在のあり方)>で生まれている。

サービス状況を覆面で調査していると、ある業界では年々レベルが低下している。これはコストカットの結果であることは明白だが、やり方では低下させることなく、逆に向上させることができます。

なによりその前に、同じ商品・サービスを取り扱っていても、利用する人の感じ方が違ってしまうのはどうしてでしょうか?人間力の違いで片づけてしまうのは簡単にしても、それで解決されるわけではありません。

「感じ方」は買い手、売り手にとって、実は一番大きな共通のテーマではないでしょうか。人の行動のすべては感情を満たすことに向けられているからです。すべての購買行動はエモーショナルな行為なのです。商品・サービスを買うことが目的ではなく、満たしたい感情を満たすことこそ目的なのです。

つまり商品・サービスが売り物ではなく、真の売り物とは顧客の感情を満たすことなのです。成功を求めるなら顧客の感情を満たすことで誰よりも熱心であることが基本なのです。

もっとも売り手も感情の生き物ですが、それなら自動販売機のようなセルフサービス店を作る前に、感情をどう扱うかを考えても良さそうですが、そうはいかないようです。

そこで、どうしても整理しておきたいことがあります。利用する人の感じ方が違う原因はたとえば接客力の違いに影響されますが、その違いはどのようにして起こっているのか、次のような階層になるのではないでしょうか。




1)商品・サービス
2)技術・知識
3)考え方・価値観
4)BE(存在のあり方)



この内、他者に見えるのは、1)と2)です。 <技術・知識>だけあっても、ほとんど何も作れないし、サービスすらできません。たとえ作ったにしても人の心に届くものは作れません。つまり売れないものしか作れない。売れたにしても、良いものと何でもいいを使い分ける2極化した賢い生活者の状況に適した判断で便利よく使われるだけです。
売れるけれど利益は出ないという状況に押しやられてしまう。サービスだって同じでマニュアル程度のことしかできないのです。

<技術・知識>を支えているのは、何を美しいと思うか、何を大事にしているか、何を持って善しとするのかという基準となる尺度があってはじめて<技術・知識>は生かされます。つまり<考え方・価値観>があることで、どの方向に何のために力を発揮するのかという道筋が出来るのです。

さらに<考え方・価値観>を動かしている<BE(存在のあり方)>という階層があります。BEとは、BE YOU、BE HAPPY、あるいはビートルズの名曲<LET IT BE>のように、存在を表現する存在動詞のことですが、日本には馴染みが薄い概念のような気がしてなりません。

セリフが魅力のシェイクスピアの作品群ですが、なかでも代表作「ハムレット」の有名なセリフ、"To be, or not to be"の翻訳に窮するのが何よりの証明ではないかと思うのです。「生きるべきか死ぬべきか」というように訳されますが、苦肉の策であって適切とは思えません。それだけ訳が難しいのはふさわしい概念がないからではないでしょうか。自分は「あるがままにか、あるがままではなくか」ということだと解釈しています。そうすると物語との整合性もあるように思います。



<BE(存在のあり方)>とは、どんな風に働いているのか、どんな風に生きているのか、毎日の暮らしで何を信じ、恐れ、喜び、悲しみ、怒り、聴いたり、話しているのか、態度や姿勢のこと。いってみればこれこそが本心です。

見せかけの勤勉に慣れきって、本心で考え行動する習慣が乏しいから、感情の生き物である売り手が、感情をどう扱うかに思いが巡らないのかも知れません。

病のために他界したアップル社の前CEOスティーブ・ジョブズ氏がこれほど注目を浴びるのは<BE(存在のあり方)>によって成し遂げられた商品の魅力、つまり生き様が生んだ類い希な商品群の輝きのせいなのです。ファンは商品に本心を感じ、生き様に共感したからこそ応援し続けたのです。

<考え方・価値観>は言葉で伝えることができますが、<BE(存在のあり方)>については、その道のプロを除けば、ほとんど言葉にすることは困難です。だからと言って<BE(存在のあり方)>がないわけではなく、誰にでも必ずあります。ほとんどの場合、ドキドキする、楽しい、腹がたつというように感情で表すのが精一杯で、アサーティブであることのバックボーンです。BE(存在のあり方)に気がつかない限り溌剌とした人生を過ごすことも、コミュニケーションもできない。自分とのコミュニケーションが不全のまま、他者とコミュニケーションできるはずがないからです。

本心から離れた価値観に基づいた商品やサービスが売れるはずがないのです。いわゆるコンセプトとは、本心から発したものでありたい。たとえば私たちが仕事と呼んでいるのは、この4つの階層全体であり、人はその全体を感じ取っている、つまり仕事シーンでのお客はこの全体と取引しているのです。安いとか、便利だとかいう理由だけが買う場合の原因ではないのです。言い換えれば買ってもらえるというのは、人間力や仕事力を提供している売り手に向けた共感や敬意の表明なのです。

それは恋愛でもなんでも同じで、真に幸福な恋愛に押し上げるか、逃避の場としての恋愛に成り下がるかは、<BE(存在のあり方)>のあり方によるのです。<BE(存在のあり方)>は生きる構えに影響を受けているのは明らかで、適切化のスキルがライフスキルなのです。

ビジネスシーンでのクレームにあるような「どのような教育をしているのか」という質問は、正にそのことを明らかにした言葉ではないでしょうか。その裏には応酬性へのこだわりがある場合が少なくない。応酬性とは、簡単に言うとギブ&テイクのことで、クレームの場合には対価への不満です。

日本古来の武術である柔道や剣道で求めた世界と同じように<技術・知識>を生かすには、それにふさわしい<考え方・価値観>と、その根底である<BE(存在のあり方)>に重きを置いた考えに共通している。LET IT BE、つまり「自分道」を築こうという次第ではないでしょうか?

マーケティングとモチベションに<BE(存在のあり方)>を。

ではBEを探しに街に出かけます。結果はまたご紹介します。