価格設定と接客力で顧客構成は変わる。(2)
【前回から続く】
安く売っても十分と思える利益、規模の経済性(スケールメリット)が機能しているなら、こんな面倒くさいと思えることをしなくてもいいでしょう。しかし面倒と思えることをコツコツ重ねていくことが広く使われている手法なのです。
なぜなら囚人のジレンマに陥り、ガチンコで価格競争をすれば、必ず利益が出なくなることは時間の問題だという自明の理だからです。
分かりきったことなので、牛丼業界の安値攻勢に対峙したコンビニ、ファストフードはもっと緻密な対策を打っています。
たとえば、マクドナルドは全国どこでも同じ価格をやめ、全国的な所得に合わせて、都心は高く、地方は安く価格設定をしました。その上で商品開発に力を入れる一方で値上げを繰り返しました。
安い商品も持っていますが、目立たないようにして<安い商品を注文する敷居を高く>して、高い商品が注文されるように誘導、客層をセグメントしました。同時にコーヒーの味を改善した上で最初のコーヒー無料サービスを実施(お代わりも無料サービスが受けられますが公表していないので知っている人だけが恩恵を受けています)
さらにメールを使ったごく一般的なクーポンと、かざして処理するクーポンの2種類を発行しました。値上げを繰り返したので、クーポンを利用しない人(主に携帯を活用しきれない年配者=お金があり、時間のない人)には、かなり高くなったイメージが残っているはずですが、時間がないので短時間で食事を済ませたい人は利用します。お金があり、時間のある人は元々利用していません。
このかざして処理するクーポンは巧妙です。顧客に個人情報を登録させた上で購入履歴を集計、顧客単位でクーポンを発行できるだけでなく、利用している店の空席情報、稼働状況とマッチングさせたクーポンを発行する仕組みを持っています。ITを活用した情報戦のようで、飛行機のマイレージの考え方を取り込んでいるのです。
この発想は「とにかく売れたら儲かるからそれでいい」ではなく、店舗の生産性の向上、ここでは「稼働率」を引き上げる徹底したコスト管理の賜物です。クーポンに魅力を与えるために値上げし、その上で割引クーポンを発行し、さらに稼働率を引き上げるために活用する。
管理コストに費用をかけるより、シンプルな方法が得という計算が牛丼チェーンに働いているのでしょうが、安く売るために従業員を少なくし、極限状態で働かせ、挙げ句ストライキ騒動に発展、舗縮小を余儀なくされる展開と視点の違いには考えさせられます。
さて、飛行機のマイレージの考え方はよく知られていますが、空席で飛ばすなら乗せて飛ばした方がマシという発想でスタートしたサービスです。正規のチケット、予約割引チケット、団体割引チケット、無料チケット、代理店を通したディスカウントチケット、(顧客情報を使った)個別の顧客対応のディスカウントチケットというように種類も料金も違うを組み合わせて便単位で稼働率をあげるように工夫されています。つまり顧客構成を組み合わせで便ごとに利益の最大化をめざしています。顧客から見れば同じ飛行機に乗っていて、同じサービスを受けていても、人によって、価格が全く違うわけですが、誰がいくらで手にしたか、分からないまま乗っているのです。【4種類の顧客×稼働率=最大利益】の発想です。
同じ考え方をしているのが、スポーツクラブ(ジム)です。
大多数の普通の人は平日の昼間働いているので、夜、土日祝しか利用できません。この人(時間のない人)たちにはいつでも利用可能な一番高い会員料を設定しますが、「いまだけ割引」を何度も繰り返して獲得に力を入れています。
昼間はアイドルタイムになるので稼働率をあげるために夕方まで限定利用できる会員を割安で募集します。高齢者、主婦、自由が利く、時間のある人が主流になります。
このモデルでは、<お金があり、時間のある人>が安く利用できてしまいます。その分を補うように基本サービス外の物販、サービスで客単価をあげる工夫をしています。逆に主流ユーザである若いユーザ層(お金も時間もない人)は、高い会員料を支払うことになります。かっこ良くなりたいというニーズをターゲットにするものの、継続利用が難しいので、新規会員獲得キャンペーンを絶え間なく行うことになり、入会のタイミングで支払額はバラバラになります。
ジム側にすれば他の会員との細かい整合性など構っていられなくなります。顧客には不満が生じますが、スタッフのコミュニケーションで補おうとします。質の高いスキルとコミュニケーション能力が問われますが、定着率が高いとは言えず課題が残されています。
<お金も時間もない人>には、毎日90分だけ利用可能な会員とか、土日祝だけ利用可能とか、料金×時間(曜日)の組み合わせで時間帯ごとの稼働率を最大限アップしています。時間帯ごとの稼働率を無視して安売りすれば顧客は行っても混雑していて利用できないと苦情が噴出し顧客離れが起こってしまうので、常に会員カードによる入出店状況を観察管理しながら販売促進を打っています。
稼働率が低く、マシン利用に空きがあれば安くしても得ですし、空きが少なければ安くせずに獲得に努めるので、顧客は同じ空間を同じ時刻に利用していますが、たまたま偶然利用しているだけで、ここも顧客が支払っている費用はマチマチです。
価格設定と接客力で顧客構成は変わります。顧客をグループごとに分類して対策を打つのが現実的で費用も抑えられます。変える理由は 最強のWINーWINを実現して、利益を最大化するためです。
みんな一様に安くしてくれと言います。特に消耗品の場合は顕著です。違いが分からないほど、価格が基準になります。
しかし、見方を変えるとはっきり言えることは、違いが伝わっていない。伝えようとしていない。違いを作ろうとしていない。
だから顧客は価格で判断するしかないという事実を作っているのは顧客でないということです。
最強のWINーWINを実現して、利益を最大化するために、顧客構成を変えます。顧客によって求めていることが違うからです。
お金があり、時間のない人(高くても買うグループ)→コミュニケーション力(親密度)
お金があり、時間のない人(それなりに高く買うグループ)→費用よりフォロー
お金がなく、時間のある人(割安なら買ってもいいかなグループ)→期間限定の特典
お金がなく、時間のない人(安くないと買う気のないグループ)→価格
顧客層によって対策は変わります。つまりニーズに応えようとするからです。実際に店は顧客と共に創っています。
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