2014年7月28日月曜日

USJがV字回復できた理由(3)

(ユニバーサルスタジオのハリーポッター)


さて、ディズニーとユニバーサルにはこの点に違いがあります。ディズニーのファストパスは無料ですが、ユニバーサルはこれをV字回復をめざした時点から有料で販売するように変更しました。
ディズニーには、園内のディズニーホテル、園外のパートナーホテル、近郊のグッドネイバーホテルがあります。
そしてそれぞれにファストパスがついていますが、その枚数が違います。もっとも多いのが直営のディズニーホテルで、待つことなく3枚もらえます。ここに宿泊するとレストランも優先予約できます。もちろん園内ですから便利で、特典もついています。但し高い上、半年前には満室状態です。
ユニバーサルにはこの園内直営のホテルがなく、園外のパートナーホテル、近郊のグッドネイバーホテルのみです。
つまり、ユニバーサルがファストパスを有料で販売した理由はこの違いにあります。おかげで地方から来た顧客は、これを買うことで待ち時間を短縮できます。最初は午前中のみの販売というふれこみでしたが、すぐに売り切れてしまうので、いまでは夕方でも購入できます。ユニバーサルにすれば売れば売る程、喜ばれながら利益が出ます。

地元客に比べ何倍もの高い入園料を支払っていることになっている顧客にさらに料金を上乗せしている格好になっています。それでもWin-Winを創造しています。再三、来れない地方客は、余計にお金を払ってでも時間を買うことを選ぶのです。





ディズニーも同じです。体験すればするほど、余計に払ってでも時間を買う方が得だと理解するので、直営のディズニーホテルに宿泊しようとします。
その一方でディズニーが地元客を対象に割引チケットを販売しているように、ユニバーサルも地元客をターゲットにした2種類の年間パスポート(大人 14,800円、子供 9,800円のスタジオ・ゴールド・パス、大人 22,800円、子供 13,800円のスタジオ・プラチナ・パス)を発行、「年間スタジオ・パス」を持っている人と一緒に行けば、割引料金でチケットを買うサービスも実施。さらにトワイライト・パス(夕方からの入園限定)があります。
遠方の顧客に向けたトワイライト&デイパス(1.5日入場券)、2デイ・スタジオパス(2日入場券)を発行しています。
これら割引システムを大々的に宣伝する、その一方で基本入園料を値上げしています。
結局、以前に増して高い支払いをしているのは、<お金があり、時間のない遠方の顧客>です。

ハリーポッター導入によって、新聞が「渡りだした3万円の川(関東から大阪への交通費の意味)」と見出しに書いたように、関東圏の顧客には大きな出費です。ユニバーサルに行かなくてもディズニーで我慢しておけばいいという選択が崩れだしたのです。
彼らにとって、10万~20万の旅行です。入園料プラスファストパスで1万~2万アップしても10%であり、大きな出費増とは感じないのです。地元客と遠方客では、支払い総額が違うので、高い支払いをしている遠方の顧客の方が感じ方は小さいのです。

逆に近郊の顧客には、値下げによって、リピート回数を増やす作戦を展開。数年に一回しか行かない人でも、安さに惹かれて購入。稼働率をあげることで賑わいの演出に成功。混めば混む程、ファストパスが売れる仕組みを構築したことで、その結果<客単価×客数>両方のアップを実現。V字回復を現実のものにしたのです。
これらの作戦の成功を支えるのが、神と言われるまでに高めた接客力とアトラクション開発です。
ユニバーサルはユニバーサル作品にこだわらず、ブランドイメージを壊さないように注意しながらも、国内のヒット作品である「ワンピース」や他社作品である「ハリーポッター」を導入するなどアトラクション強化しています。
ディズニーもユニバーサルも、アトラクションを目玉に、地方の顧客に高い料金を容赦なく負担してもらっています。


このもっとも高い費用を支払うグループに照準を合わせ、高い負担にふさわしい満足を提供、WINーWINを実現する志とモチベーションを高めています。神と言われるまでに高めようとする意志が共有でき行動することでリピートが生まれる好循環が収益アップにつながっているのです。

つまり安くする背景の一方には、高く売る発想があり、増収増益のプランがあり、ヒットするかどうか分からないアトラクションを導入する以前に、<客単価×客数>をアップする展開を用意、成功させるモチベーションのもとで同時に決行する。どれかひとつ欠けても失敗する因果関係があるからです。



(ユニバーサルスタジオ・フロリダ)



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