2010年3月25日木曜日

クーポン券が小さい理由



クーポンメールはなぜ手間がかかるのか?

店はお客さまと協働で作っていくものだとお話しました。
しかし、経営の主体性は会社にあります。ですから、まず店がお客さまに投げかけて、お客さまがキヤッチして投げ返す関係にあるのがほとんどです。

ところで「クーポン券」がなぜ小さいか、その理由はご存知ですか?経費節約?

 では、TUTAYAなどのクーポンメールは、なぜ手間がかかるようになっているのか?その理由も経費節約だと思いますか?TUTAYAのメールは、まず画面の下にスクロールして、 URLをクリックして、クーポンのアイコンのあるサイト内のページに移動して、割引資格を提示できて、はじめて割引を受けることができます。お客さまを集客するだけならそんな手間をかける必要はありません。それにTUTAYAにはすべての会員にクーポンなしで割引するサービスデーもあります。

 いまでは、劇場でヒットした映画でも、1年も経てば廉価版DVDがでます。ヒットした映画ならレンタルもあるし、家族で見るなら断然安く鑑賞できます。
それなのに、古い映画のDVD5枚組ボックスが、リリースされてから3年を経過しても価格据え置きのまま、バラ売りもされないものがあります。

クーポン券、メールクーポン、DVD5枚組のボックス・・・これは全部「価格差別という手法です。価格差別というと、売るために安くしているのだろうと思いますよね。そうです。

「クーポン券」がなぜ小さいか、その理由はご存知ですか?これは価格の扱い方の問題なのです。

価格差別

価格差別とは、基準価格を上回る、あるいは下回る価格設定をすることです。
そもそも価格差別という手法は、市場を独占化したポジションにある会社がするものです。
どうして独占化した会社が、価格差をつける必要があるのか、疑問に思われるかも知れません。
それは現実に、自社のポジションに関係なく価格差をつけて販売している状態になれてしまっているからだと思います。

現実がそうだから、それはそれで受け入れたらいいのですが、但し価格差別の意味を正しく理解しておかないと間違いを冒す可能性があるので注意してください。

価格差別は、最大の収益を得る手法なのです。
価格差別は、お客さまを獲得するために、欲しい収益を我慢してでもがんばろうというものではありません。

独占した状態と言ってもお客さまがついてくる限界があります。
お客さまにはいろんな人がいます。

・高くても買う人
・安ければ買う人
・もっと安ければもっと買う人

などです。そこで市場を独占化した会社は利益を最大化するために、同じ価格で売る必要がないと考えます。
お客さまがついてくる範囲で、高くても買う人には高く売ればいいのです。安くしないと買わない人には安くすればいいと会社は考えます。もっと安ければもっと買う人にはもっと安くしてもいいのです。
そうすると適正な売り方ができて収入も最大化できます。これが価格差別の目的です。
市場を独占化した会社が価格差別をする理由はそこにあります。

効果的に価格差別を実行するには、顧客層と価格をどうマッチングさせるといいのか、会社は考えます。
その代表例をマクドナルド、餃子の王将、 TUTAYA、コンビ二各社に見ることができます。
これらは全国同じ価格で販売していません。
まず都市と地方で違います。さらに同じエリアでも店舗によって違うことがあります。オフィス街と学校の近くでは違います。その上シニア割引、学割があり、さらにメール割引やクーポンなどで価格差をつけています。

その基準の目安が「収入」です。そこで都市と地方で価格差があるというようなことが起こります。
しかし金持ちだから高くても買うとは限りません。収入が低いから高いと買わないとは限りません。忙しいと構っていられない人もたくさんいます。「時間」の問題です。
つまり「収入」と「時間」の有無が、価格差別の基準なのです。

クーポン券が小さい理由

では、どのようにして「収入」と「時間」の有無を把握するのでしょうか?
そこでクーポン券なのです。クーポン券でお客さまの選別をするのです。

クーポン券が小さい理由はここにあります。
メールのクーポンが手間のかかるようにしてあるのも同じ理由です。
お客さまが価格にどれだけ敏感に反応するかを判断するために小さいのです。
お客さまの価格に対する弾力性を見極めているのです。

弾力性とは、弾力性が大きいグループ、安くするともっと買う人たちです。

弾力性が小さいグループとは、価格変動に反応しない層の人たちです。このグループには安くしても売上に影響しないので高い設定をします。

つまりクーポンの扱いが不便なのに使うというのは、安ければ買うというメッセージです。
逆に手間のかかるクーポンなんか使いたくないというのは、高くても買うというメッセージです。
要するにクーポンを発行している会社は、安売りするためにクーポンを出しているのではないのです。メッセージを受け取って、利益を最大化するために価格設定に使っているのです。
これも全国同じ価格で販売していないのと同じ理由なのです。

・高くても買う人
・安いと買う人
・もっと安いともっと買う人

お客さまをグループ分けして、お客さまの弾力性を考慮して「客数×客単価」のバランスで最大の利益を獲得する手法が「価格差別」なのです。

さらにグループわけしておくと、投げ網が使えるので、効率の悪い一本釣りをしなくてすみます。

自己選択型の価格差別

面倒なクーポンを使ってでも、お客さまは設定されたいくつかの価格から、自分の価格を選びます。これを「自己選択型の価格差別」と言います。つまりお客さまは自分からグループ分類に積極的に協力してくれているのです。店とお客さまは、価格の点でも協働しているのです。

TUTAYAの場合、店舗によって価格が違います。しかも新作、旧作の分類も時期も違います。
同じ地域でも、顧客層で価格を変え、品揃えも変えています。
実はこの原型が、アメリカのクルマメーカー、ゼネラルモーターズ(GM)の戦略です。


ゼネラルモーターズの反撃

そこで、もっとも価格差別の本質を理解しやすい事例をご紹介します。
クルマが普及するきっかけとなったのは、1908年、フォード社が当時画期的なベルトコンベアー式工場で作った価格の安いT型フォードの登場です。T型フォードは他社の1/3の価格で購入できたのです。
この生産方式は、チャップリンの映画「モダンタイムス」の題材になるほどでした。
自動車はもはやフォードの独壇場になり、競合他社は合併を余儀なくされました。

統合してできた会社がゼネラルモーターズ(GM)です。それでもGMは競争の対象に ならない存在でした。

1924年のこと。T型フォードの価格は量産に次ぐ量産で発売当初の1/3まで下がっていました。シェアはフォードがT型フォードだけでも 56%を占領、GMは全部合わせても12%程度です。太刀打ちできる状態ではありません。しかし・・・

 GMの反撃はここから始まります。GMは、「サービス力の違い」で打って出ます。お客さまが欲しくなる車を開発、価格が高くてもいい人には高級車、安いのがいいという人には安いクルマ、安ければもっと買いたいという人には、さらに安いクルマというように、お客さまの志向に合ったクルマをフルライン化したのです。これが価格差別の典型です。

この戦略が功を奏して、GMは、フォードを制して全米トップに立ちます。「価格差別」を「サービス力の違い」でやり遂げたのです。


サービス力があって価格が活きる

価格差別をするには条件があります。
「転売」の問題です。
転売できないようにしないと価格差別が難しくなるのです。
A社がB社に高く売りたい商品を、安く買ったC社が転売するとB社に高く売れません。それどころか、C社がどんどん販路を広げて安く売ると、A社は価格差別ができなくなります
これを封じるには、転売できない条件がついていることにつきます。
転売できない条件がついていると価格差別がしやすくなります。

その点、「サービス」は転売できません。これをやり遂げたのがGMなのです。
先にあげたファーストフードやコンビ二も価格差別ができるのは、待たずにすぐ買える条件がついているからです。TUTAYAが価格差別できるのは品揃えの豊富さです。
餃子の王将が価格差別できるのは、早い、うまい、安いです。そして全体に言えるのが立地に合わせた店舗の差別化なのです。

古い映画のDVD5枚組ボックスが、リリースされてから3年を経過しても価格据え置きのまま、バラ売りもされないのは、安くしたらから売れるものでもなく、マニアックな人しか買わないものだからです。だから買った人は転売しないので中古市場にも出ません。

もし中古市場に転売されるようならば、価格は下げざるを得ませんが、それもないので高くしておいた方が最大の利益が出るので高いままなのです。マニアックな人がこの値段なら買うと決断する状態にするのが売る側のスキルなのです。それができると売れた数が少なくてもドル箱になることもあるのです。

値下げ要求が通用したら買い手が喜ぶように、価格の問題はお客さまの視点で観ると、安く買えるのはサービスのように思います。

しかし、売る側にとっては安くても高くても関係がなく、どうしたら利益を最大化できるかの問題なのです。

 たとえばガソリンスタンドのような場合、画一的なセルフサービスが増えるほど、特約店はサービスが封じ込まれる結果、価格差別が難しくなります。サービス力で抜き出たところは価格差別がやりやすくなります。

ここで新たな問題が生じます。サービス力を駆使して価格差別をする店は、売るために無意味に価格を下げようとするものと遭遇するからです。これは黎明期のGM対フォードのような状態です。価格を下げて売り勝つには、「サービス条件」がついて回るのです。

価格差別の意味を正しく理解しておかないと間違いを冒す可能性があるので注意してくださいと言ったのは、この点なのです。

つまり、サービスが他社よりも明らかに良いときに、価格は力を発揮するのです。

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